エコが重視されている今、缶、ペットボトル、紙類、家電等々、これら様々なものをリサイクルするという意識は世間に幅広く浸透し、ほとんど日常生活の一部として溶け込んでいます。ゴミの分別や不要物を引き取ってもらう行動も特別に行っているとういうものではないでしょう。ただ、今の主流であるリサイクルには、再利用のために膨大なエネルギーを消費し、さらに品質的にも中古品としての価値が下がってしまうという難点があります。これは、リサイクル前後でモノの質を下げてしまう“ダウンサイクル”と呼ばれています。ところが、近年、これら旧来のリサイクルを超えた“アップサイクル”が大きな注目を浴び始めてきました。

 
 アップサイクルとは、単にゴミになったものを再資源化するのではなく、ゴミを再利用しながらも付加価値を加え、より高品質な商品を生み出すリサイクルの一種です。例えば、仏高級ブランド「エルメス」は、有名なバーキンなどの端切れや目に付かぬほどの小さなシミがついたシルクをアップサイクルし、インテリア用品などの小物を扱うブランドラインを設立しています。また、日本企業ではテント用膜材の切れ端を材料にスポーティーなデザインのバックへと全く新しい形に再創造。さらに、企業・大学・地域との協同プロジェクトとして、廃棄物であるヨットの帆を美術大学生デザインのバックなどへとアップサイクルする活動を行っています。
 
 中でも、米企業テラノサイクル社は、大規模なアップサイクル企業といわれており、年間約40億点を超えるゴミを魅力的な商品へと作り変えています。商品の原材料は、100%リサイクル素材。食料品の包装やペットボトルから起動しなくなったパソコンのマザーボードまで多くの不要物が、商品の原材料となっています。2001年に創業した同社は、世界20ヵ国に進出し、09年度の売上は約750万ドル、昨年度は1320万ドル、今年度は2000万ドル(約16億円)を見込むという素晴らしい業績を持つ、世界最大のアップルサイクル企業に成長しています。大きな将来性を持つ産業といえるのではないでしょうか。
 
 まだ、日本ではまだ認知度の高くないアップサイクルという言葉ですが、年々この市場規模は拡大しつつあります。ゴミとは人や企業がある限り必ず存在するもの。環境への配慮という価値に、さらなるプラスアルファを付け加えるアップサイクル。リサイクルに分野において、アップサイクルは環境とビジネスという新たなる可能性を秘めています。
アルフィックス日報より
歯科・松村クリニック