明るい一歩のために
東日本大震災の津波によって被災地には大量の瓦礫が土地を覆う状態となって
おります。その量は岩手県では年間処理量の12年分に相当する580万トン、
さらに、宮城県では1500万~1800万トンに上るとの見通しが出ていま
す。これはおおよそ県内で排出される一般廃棄物の23年分に相当するというこ
とです。また、これらの処理費用として3000億円が見込まれています。政府
の推定によると、今回の災害の瓦礫の量は2500万トンあり、その約8割に当
たる2000万トンが木材とみられております。そこで、この木材をバイオマス
発電で有効活用する事業、木質バイオマス発電がニュースなどで取り上げられて
います。
木質バイオマス発電とは間伐材や木材の廃材・端材などを燃やした熱で蒸気を
作り、その蒸気の圧力でタービンを回して電気を作る仕組みです。木を原料とす
るチップを燃焼させると二酸化炭素が発生します。しかし、この二酸化炭素は
チップの素となる植物が成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素
ですので、チップを燃焼させても全体としてみれば大気中の二酸化炭素は増加さ
せていないというカーボンニュートラルの考えに基づいています。
現在、日本には木質バイオマス発電所は全国に100カ所程度あり、民間企業
が運営しております。このバイオマス発電では木くず10万トンで年間1万キロ
ワットの発電が可能とされています。今回の災害で2000万トンが木材の廃材
となりましたので、これを利用できたならば、200万キロワットの電力を生み
出せることになります。福島原子力発電の事故で今夏の電力不足が懸念される
中、木質バイオマス発電が注目されています。すでに、木質バイオマス発電所で
自家発電している業者から木材の瓦礫を引き受ける申し出もあるようです。
前述しましたように瓦礫処理費用として3000億円程度が必要で、すでに環
境省の災害廃棄物処理事業費として同額程度が計上される方向ですが、ほとんど
が焼却処分される見通しです。確かに廃材はそのまま処分するとゴミになります
が、視点を変え、処理の仕方を変える事で、廃材だったものが今日本に最も必要
な電気になります。津波によって流されてしまった事でたくさんの思い出の詰
まった木材は廃材となってしまいました。その木材をただゴミとして処理してし
まうのではなく、今の日本に必要なものに変えられるのであれば、変えるべきで
す。そして、被災地の未来をもう一度明るく照らす木材となって欲しいものです。
アルフィックス日報より