歯周病について
1)歯周病とは?
ひと言でいうと歯と歯茎のまわりを含めた病気です。歯茎(歯肉)の内部は、見えませんが歯の根元にあるセメント質と歯槽骨とを支えている歯根膜線維からできています(図1)。むし歯と違って歯の形が壊れていくのではなく、歯の周囲を支えている組織が壊れていく病気です。
日本人の55~64歳代の約50%がこの病気に罹っています。まさに生活習慣病と云われる訳です(図2)。
図1 歯周組織 |
図2 日本人で歯周炎にかかっている人の年齢階級別グラフ [厚生労働省健康政策局歯科衛生課編:平成17年歯科疾患実態調査報告より作図] |
2)歯周病の症状
1 歯をみがくと歯ブラシに血がつく | はい 4点 |
2 歯茎がはれている | はい 4点 |
3 冷たい水を飲むと歯や歯茎がしみて痛い | はい 3点 |
4 口が臭い | はい 4点 |
5 歯がグラグラする、咬みにくい | はい 5点 |
6 歯と歯の間に食片がよくはさまる | はい 4点 |
7 歯が以前より長くなったようにみえる | はい 4点 |
8 朝起きた時、口の中が粘っていた感じ | はい 3点 |
9 歯茎を押すとうみがでる | はい 5点 |
10 歯茎の周りにプラークや歯石がついている | はい 4点 |
以上 10 項目を挙げてみました。ご自分で気になる項目に印を付けて点数を合計して下さい。
歯周病セルフチェック表 | |
0~5 | まずは安心 油断禁物 毎日きちんと歯を磨くこと |
~20 | もしかして?もう一度、鏡で口の中をチェックしよう |
~40 | 要注意 歯科でチェックしてもらう必要あり |
3)歯周病の治し方
歯周病の治療は、本人が病気を治そうという努力(セルフケア)と歯科医や歯科衛生士による治療(プロフェショナルケアを含めて歯周治療の項参照)に大きく分けられます。
セルフケアでできること。
歯周病の原因は細菌プラークです。これを確実に取り除くには「プラークコントロール」を行うことです。プラークコントロールの基本は毎日の歯磨きです。
1.自分にあった歯ミガキの方法を身につける
1. 使いやすい歯ブラシの選び方
a) 毛足はストレート型、毛束は 3~4 列ぐらいで間隔は適当に空いて清掃しやすく、通気性のよいもの
b) 歯ブラシの硬さは普通か、やや柔かめのもの
c) 歯ブラシの持ち方、エンピツを持つようなペングリップ
図1 使いやすい歯ブラシの選び方 | 図2 エンピツを持つように(ペングリップ) |
2. 磨き方
歯の磨き方は、基本的に一歯ずつ丁寧にみがく事です。ご自分に適した磨き方があります。
歯科医師・歯科衛生士に指導してもらい自分の磨き方を会得しましょう。
図3-a バス法 歯ブラシの毛先を歯と歯肉のさかい目に向けて45°の角度にあて、 軽い力で小きざみに動かします |
a) バス法
図3-b スクラビング法 歯ブラシの毛先を歯に直角にあて、 軽い力で小きざみに動かします。 歯の内側は45°にあてます |
b) スクラビング法
c) みがく方法
図4 みがく方法 |
3. 歯ブラシのサポーター
歯ブラシでは歯と歯の間、歯と歯茎の周りなどの汚れが取りにくい部位があります。歯ブラシの補助清掃用具を使います
図5 歯間ブラシ |
a) 歯間ブラシ
歯肉を傷つけないように歯と歯の間に歯間ブラシをゆっくり入れて回転させながら、歯の側面に押し当てて、 10 回前後動かす。手鏡を見ながら使いましょう。
b) 部分磨き専用歯ブラシ
普通の歯ブラシで磨きにくいところ、奥歯の裏側やうしろ側、歯並びが悪い場所など。
図7 デンタルフロス(糸ようじ) |
c) デンタルフロス(糸ようじ)
歯間ブラシが入らないような歯と歯の 間が狭い場所に用います。
これらの補助清掃用具の使用については、大きさ、使用方法について歯科医師や歯科衛生士の指導のもとに正しい使い方を習って下さい。
4. 生活習慣の改善で歯周病のリスクファクターを取り除く
a) 喫煙
タバコは歯茎の毛細血管に循環障害を生じ、歯にヤニや汚れが付き、プラークが付着し易くなります
b) よく噛むこと(肥満防止)
早食いは食物を沢山食べる事につながります。ゆっくりとリラックスしてよく咬んで食事を楽しむことが大切です。
c) 食生活の見直し(食育)
繊維性の多い野菜、ビタミン C の豊富な食物や果物をとり、 栄養のバランスの取れた食事を心がけましょう。
d) ストレスの解消
嫌なことは早く忘れて、ジョギング運動、アロマ療法、音楽療法など心のバランスも大切です。
4)日常生活での注意点
• 毎日の生活の中できちんと歯を磨くというプラークコントロールを定着させましょう
• 「歯を磨いている」と「歯が磨けている」との差を認識しましょう
• よく咬む事で歯周組織を鍛え、脳細胞を活性化し、ボケを防ぎましょう
• 食生活はけじめをつけて、とくに甘い物を続けて食べないようにしましょう
• 禁煙することで歯周病だけでなく、他の病気も予防することになります
• お年寄りはとくに外出先より帰宅した場合、手洗い、含漱(うがい)、プラークコントロールを行い、歯周病だけでなく、誤嚥性肺炎にならないよう気をつけましょう
• 口の中に異常がみられたら直ちに「かかりつけ歯科医」へ行きましょう
• 年に2~3回は歯周病でなくても定期検診を受けましょう